
ビルネットでは企業の責任として障がい者雇用に取り組んでおり、都内のとある学校施設では、監督者以外全て障がいのある方だけで清掃業務を行っています。今回は障がい者雇用の専任担当者である花輪さんに、清掃業務に従事する障がい者スタッフとの日々のやりとりや、仕事の進め方について聞きました。
- 清掃

皆さんが得意を活かしたり補い合うことができるように
-仕事の一日の流れを教えてください
朝、本社に出社してメールチェックや社内の連絡事項の確認などを行ってから、障がい者スタッフが清掃業務を任されている学校施設のビルに移動し、障がい者スタッフの皆さんと業務前のミーティングを行います。ミーティング後、6名の障がい者スタッフが2つのグループに分かれて階段や廊下、ホール、トイレといったビルの共用部分を清掃します。
お昼休憩を挟んで夕方に業務を終えたらまたミーティングをして、障がい者スタッフはそこで終業です。私は本社に戻って報告書をとりまとめたり、上司と打ち合わせをしたりして一日が終わります。
この現場で働く障がい者スタッフの多くは、同じ支援学校を卒業して、同じ障がい者就業・生活支援センターで訓練等を受けているんです。なのでお互いに気心が知れてて仲も良く、良いチームワークで仕事に臨んでいます。
誰かの作業が遅れていれば、他の誰かがフォローに入る。そういう助け合いは、私から言わなくても自然にやってくれていますね。


-清掃業務を行う上での、障がいへの配慮について教えてください
業務前のミーティングでは、その日の作業の流れをしっかりと確認するようにしています。というのも現場では、「今日はこのフロアには入れない」といった普段とは異なる状況になることが時々あります。そういった場合に障がい者スタッフの皆さんが混乱しないように、ミーティングでしっかりと伝えています。
また、障がい者スタッフの皆さんは、例えば同じ知的障がいであっても、それぞれ異なる個性を持っています。その個性を見極めながら「こういう作業は○○さんが得意だからやってもらおう」とか「○○さんはこういうことが苦手だから、別のスタッフにやってもらおう」といった感じで、皆さんが得意を活かしたり補い合うことができるよう、グループ分けや作業の振り分けをしています。
それと障がい者スタッフの皆さんには「連絡ノート」を配布して、ご家庭と会社との連絡手段として活用しています。仕事中に何かトラブルが起きたり、あるいは仕事仲間と何かあったりしても、スタッフの皆さんはそれをご家庭に上手に伝えることが難しいです。なので連絡ノートを通じて「今日は仕事でこういうトラブルがあったので、ご家庭に帰られてからも落ち込んでいるかもしれません」などとお伝えすることで、状況を共有しながら安心して働き続けてもらえるよう配慮しています。
-仕事をしている中で大変だと思うことはありますか?
大変だと思うことはあまりないんです。ただ先ほども言ったように、清掃業務の内容に突発的な変更があったりすると、少し大変ですね。
日々仕事をすることで、障がい者スタッフの皆さんの頭の中では一日のストーリーが出来上がっています。突発的な変更でそのストーリーが崩れてしまうと、混乱してしまうんです。
なので、いつもとは違う状況の時は二手に分かれず皆一緒になり、「○○さんは机を拭いて、○○さんは掃除機をかけて、○○さんは窓を拭いて」といった感じで丁寧に説明しつつ、ゆっくりと作業を進めるようにしています。


「できないから」と諦めることを私はしたくないんです
-仕事のやりがいはどんなことでしょうか?
仕事のやりがいは、障がい者スタッフの皆さんが、以前できなかったことができるようになることです。
皆さんとても一生懸命なんですよ。苦戦しながらも一生懸命に作業されている姿を見ていると、感動することもあるんです。
例えば、障がいにより空間的認知の把握が難しいスタッフにとっては、モップで床を拭く作業が大変なんです。部屋の広さを認識することが困難なため、作業に長い時間を要してしまいます。
だからといって「できないから」とモップ作業を諦めることを私はしたくないんです。広い空間は大変でも、もう少し狭い空間ならできるかもしれませんよね。そのスタッフにとっての「できる」範囲を見つけて、それをやってもらう。すぐにはできないかもしれないけど、繰り返してみればできるようになることもあります。そういう成長の姿を見るとすごく嬉しいですね。
ただ、あまり固執してしまうのも良くないと思っています。しばらくやってみてもらっても難しそうなら、一旦別の作業を任せる。それでしばらくしてから再度挑戦してもらうと、あっさりとできてしまうこともあるんです。
-障がい者スタッフとのコミュニケーションで心がけていることは?
やっては駄目なことをしても、むやみやたらに否定しないことです。わざとやっているわけではないことも多いですから。
例えば誰かが誰かにぶつかって謝らなかったとしたら「ぶつかったのに謝ってもらえなかったら、自分だったらどう思う?」と問いかけます。「嫌だ」と返ってきたら「そうだよね、じゃあ謝ろうか」といった感じで。ネガティブな言葉で否定するのではなく、問いかけをしながら前向きなコミュニケーションを図ることを意識しています。


ありのままの自分で来てください、一緒に学びましょう
-障がい者雇用の専任担当者としての今後の展望と、会社や社会に期待することは?
今後、障がい者雇用をより促進していくためには、私のように障がい者スタッフをリードできる人材を増やすことと、障がい者スタッフが働ける現場を増やしていくことが大事だと常に思っています。
現場を増やすという観点から言えば、いま障がい者スタッフが主に従事している清掃の業務以外にも、さまざまな業務で活躍してもらえる機会が、会社でも社会でも増えていけば良いなと思います。
障がいがある方は皆さんそれぞれ、やってみたい仕事というのがあります。その気持ちに応えられるように、トライしてもらえる度量がある会社にしていきたいですね。
-ビルネットで働いてみたいと思ってくださる方へメッセージを
「ありのままの自分で来てください、一緒に学びましょう」っていう感じですかね。私自身、障がい者スタッフと日々一緒に仕事をする中で、皆さんから教わることがたくさんあるんです。お互いに日々成長していければ良いなと思いますし、そうできるようにこれからも就労環境づくりを頑張っていきます。
